「紙やExcelの管理をアプリにしたいけれど、何をどう伝えればいいのか分からない」「開発会社に相談したら、まず要件を整理してくださいと言われた」。業務アプリの導入を考え始めた中小企業の経営者や担当者から、こうした声をよく耳にします。
業務アプリの要件定義は、「何のために、誰が、どんな機能を使うのか」を開発前に言葉にしておく工程です。ここがあいまいなまま開発に進むと、完成後に「思っていたものと違う」というズレが起きやすくなります。この記事では、業務アプリの要件定義の進め方を、発注前に整理したい7項目と5つの手順に分けて解説します。専門知識がなくても取り組める内容にまとめていますので、社内で検討を始める際の参考にしてください。
業務アプリの要件定義とは?発注前に整理する理由
要件定義とは、アプリに求める目的・機能・使い方などを整理し、発注する側と開発する側で認識をそろえるための工程です。一般的には、アプリで実現したい機能を整理した「機能要件」と、使いやすさ・セキュリティ・動作環境など機能以外の条件を整理した「非機能要件」に分けて考えます。
発注前に自社で要件を整理しておくと、次のようなメリットがあります。
- 開発会社との打ち合わせがスムーズになり、提案内容を比べやすくなる
- 「本当に必要な機能」と「あれば便利な機能」を区別しやすくなる
- 完成後の手戻りや追加の修正を減らしやすくなる
- 現場の担当者が導入の目的を理解し、社内に定着しやすくなる
要件定義は開発会社と一緒に進めるのが一般的ですが、業務の中身を一番よく知っているのは自社のスタッフです。社内で事前に情報をまとめておくほど、打ち合わせの質が上がります。
要件定義の前に準備したい「現状業務」の棚卸し
いきなり「欲しい機能」から考え始めると、今の業務の問題点が置き去りになりがちです。まずは、アプリ化したい業務が現在どのように行われているかを書き出しましょう。
- 誰が、いつ、どの業務を行っているか
- 紙・Excel・メール・電話など、どんな道具を使っているか
- どの作業に時間がかかっているか、ミスが起きやすいのはどこか
- 情報がどこからどこへ受け渡されているか
たとえば「日報を紙で提出し、事務担当がExcelに転記している」という業務なら、転記の手間や入力ミス、集計の遅れが課題として見えてきます。課題が具体的になるほど、アプリで解決すべきことがはっきりします。Excel管理からの切り替えを考えている場合は、Excel管理の限界と業務アプリへ移行するサインもあわせてご覧ください。
業務アプリの要件定義で整理したい7項目
現状業務を把握できたら、次の7項目を整理します。すべてを完璧に埋める必要はなく、分かる範囲で書き出すだけでも十分に役立ちます。
| 項目 | 整理する内容 |
|---|---|
| 目的 | 何の課題を解決したいか |
| 利用者 | 誰が使うか、何人で使うか |
| 使う場面 | いつ・どこで・どの端末で使うか |
| 主な機能 | 入力・検索・集計・通知など |
| データ | 顧客情報や作業記録などの種類 |
| 権限 | 誰が閲覧・編集できるか |
| 導入時期 | いつまでに使い始めたいか |
目的と利用者は最初に決める
7項目のなかでも、特に大切なのが「目的」と「利用者」です。目的が「集計作業の時間を減らしたい」なのか「外出先から報告できるようにしたい」なのかによって、優先すべき機能は大きく変わります。また、現場スタッフが使うのか、管理者だけが使うのかによって、画面の分かりやすさや操作方法の考え方も変わります。
機能には優先順位をつける
必要な機能を書き出したら、「必須」「できれば欲しい」「将来的に欲しい」の3段階に分けておきましょう。最初から多くの機能を盛り込むと、開発期間が延びたり、操作が複雑になったりする原因になります。必須の機能に絞って小さく始め、使いながら機能を追加していく進め方も選択肢のひとつです。
要件定義の進め方5ステップ
ここからは、社内で要件を整理し、開発会社と内容を固めるまでの流れを5つのステップで紹介します。
- ステップ1:プロジェクトの担当者を決める
社内の窓口となる担当者を1人決め、判断に迷ったときに相談できる責任者も決めておきます。 - ステップ2:現場の声を集める
実際に業務を行うスタッフに、困っていることや改善したい点をヒアリングします。 - ステップ3:7項目を資料にまとめる
前の章の7項目を、箇条書きや簡単な表で整理します。手書きの画面イメージがあると、より伝わりやすくなります。 - ステップ4:開発会社と打ち合わせをする
まとめた資料をもとに相談し、技術的に実現できるか、別の方法がないかを一緒に検討します。 - ステップ5:要件を文書にして合意する
決まった内容を要件定義書などの文書に残し、双方で確認してから設計・開発に進みます。
ステップ4では、既存のクラウドサービスで対応できるケースもあります。自社専用のアプリを開発するか、既存のサービスを活用するかも含めて相談できると、自社に合った方法を選びやすいでしょう。
要件定義でよくある失敗と注意点
要件定義では、次のような失敗が起こりやすい傾向があります。あらかじめ把握して、対策に役立ててください。
現場の意見を聞かずに決めてしまう
経営者や管理者だけで要件を決めると、実際の業務の流れに合わず、現場で使われないアプリになることがあります。導入後の定着を見すえて、早い段階から現場の担当者を巻き込みましょう。定着のコツは業務アプリを社内に定着させる方法でも詳しく紹介しています。
「今の業務をそのまま再現する」ことにこだわる
紙の帳票と同じ形をそのままアプリにすると、デジタル化のメリットを活かしきれない場合があります。アプリ化をきっかけに、不要な承認や二重の入力がないかを見直すことも大切です。
開発中の仕様変更が積み重なる
開発が始まってから要件を大きく変えると、スケジュールに影響が出やすくなります。変更が必要になった場合は、優先順位を見直したうえで開発会社と相談しましょう。なお、個人情報を扱うアプリの場合は、データの管理方法や社内ルールについて、必要に応じて専門家にも確認しておくと安心です。
まとめ:要件定義は「目的の明確化」と「優先順位づけ」が鍵
業務アプリの要件定義は、開発を成功に近づけるための土台づくりです。最後に要点を振り返ります。
- まずは現状業務を棚卸しして、課題を具体的にする
- 目的・利用者・機能など7つの項目を分かる範囲で整理する
- 機能に優先順位をつけ、必要な機能から小さく始める
- 現場の声を集め、決まった内容は文書に残して合意する
株式会社FLCアドバンスでは、「何を作るべきか」という企画・要件整理の段階からご相談をお受けしています。目的や利用シーンを一緒に整理し、本当に必要な機能を見極めたうえで、設計・開発・公開後の運用まで一貫してサポートします。詳しくはアプリ開発サービスのページをご覧ください。
また、アプリの導入とあわせて、データ入力や事務作業を人の手で支えるアウトソーシングサービスもご用意しています。「アイデアはあるけれど、何から始めればいいか分からない」という段階でも構いません。まずはお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。